ロバート博士は、「本日あえて掲載した理由は、君塚大将がお亡くなりになって、ちょうど一か月が経ったからです。未だ喪失感を感じます。」とコメントしていました。
世界的に尊敬された君塚大将を悼む――アメリカの旧友として
執筆者:ロバート・D・エルドリッヂ
2011年から2013年まで陸上幕僚長を務め、東日本大震災で統合任務部隊(JTF-TH:Joint Task Force – Tohoku)を指揮したことで知られる君塚栄治大将=写真=が亡くなられたことに、私は友人として深い悲しみを覚えている。享年63だった。
昨年12月28日、彼は入院先の病院で肺がんのため急逝した。少し前に私は彼の妻から「夫は11月の下旬より入院しています」というメールを受けとっていたが、それほど深刻だとは気づかなかった。彼とはずっと以前からやりとりがあり、いま私が書き進めている本――米軍による大規模な救援活動「トモダチ作戦」について――に関連して、いくつか質問をしていた。通常と違って返事は数日後だったが、今度は彼の妻からであり、そこには彼が教えてくれた丁寧な内容が記されていた。
私が君塚さんに初めて会ったのは2004年8月のこと、那覇に駐屯する陸上自衛隊第1混成団(現在は第15旅団)の団長をされていた。当時の私は大阪大学大学院の准教授で、ハワイにあるアメリカ海兵隊で客員研究員兼政治顧問として1年間の在外研究に出かける直前だった。
その後、君塚さんは陸上幕僚監部人事部長を経て2006年7月に中部方面総監部幕僚長・伊丹駐屯地司令に就任。同じ関西で仕事をしていたこともあるが、彼の献身的なまでの地元との関係作りを通じて、関係はさらに深まった。陸将に昇進し、西部方面隊第8師団長を務めた後は、私の恩師である五百旗頭眞・神戸大学名誉教授が学校長を務める防衛大学校の幹事になられたから、その関係でしばしばお会いする機会があった。
2009年7月に第34代東北方面総監に就任、その20カ月後にかの地を大震災が襲った。彼の部隊はしっかりと準備され、地元とも深いつながりを築いていたため比較的スムーズに対応ができたし、米軍関係者との緊密な関係もうまく対処できた要因の1つだった。
海兵隊(後に在日米軍)の前線司令部の政治顧問として仙台駐屯地に到着した際、私は旧友と再会する気持ちのかたわら、彼のもとで、彼のために仕事ができることを誇らしく思ったものだった。君塚さんも、私が居ることで内心ほっとしていたそうだ。
君塚さんは、震災当時の在日海兵隊のトップ、ケネス・グラック中将とも以前から交流があった。第1混成団の団長(陸将補)だった頃、グラック中将は第3海兵遠征旅団長(准将)でお互いにカウンターパートであり、組織のリーダー同士でもあった。
君塚さんは親切で、思慮深く、あるいは慎重だったと言う人もいる。震災対応のため朝晩行われるミーティングは毎回2時間にも及び、自分の考えや様々な情報を共有し、士気を高めるだけでなく何らかの教訓をもたらした。ある晩、彼は3月16日に天皇陛下が悲劇に見舞われた国民に向けて述べられたお言葉――その中で自衛隊の働きを称賛されていた――に言及した。それは、疲労とストレスが高じつつあった自衛隊の仲間たちにとって、とりわけ意味深いことだった。
彼は細部にまで気を配る人だった。スキューバダイビングを愛し、深く潜るのが好きだったが、それは仕事においても同じだった。事実、文脈、ニュアンスについて深く追求した。常に厳格ではあったが、礼を失することは決してなかった。ずっと後になって、「ミーティングはセミナーみたいでしたね。教授が最後に議論をまとめ、参加者に知恵を授けるんですから」と申し上げたのは、教育者である私としては褒め言葉のつもりだった。ご本人は、そうは受け止らなかったかもしれないが。
その年8月、周囲の予想に反して君塚さんが陸上自衛隊のトップ(陸幕長)になったのは、指揮官としての実際の経験が必要とされたからだった。加えて、トモダチ作戦の中で、彼はアメリカ海兵隊・海軍のチームが持つ水陸両用の作戦能力を目の当たりにした。それは日本にとって不可欠なものであり、自衛隊の統合運用に苦労した経験も3.11以降の陸上自衛隊を導くために活かされるだろう。間違いなく、彼は陸上自衛隊を前進させたのだ。
昨年11月6日、私が橋渡しをして、君塚さんはアメリカの大学で震災について講演をした。講演の後、地元の日米協会の前会長が、講演がいかに「素晴らしい」もので、君塚さんが「非常に印象的な紳士」であったか、私に書き送ってくれた。
まったく同感である。君塚大将のご冥福を祈る。
2011年3月15日、筆者(中央)と君塚氏(右端)。君塚氏は当時、統合任務部隊指揮官の地位にあった。筆者の隣りは米軍海兵隊のケネス・グラック中将/在沖縄米海兵隊提供
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